門前で30分ほど待たされる。体は冷え切っている。中から先ほどの者が門を空けに来た。「福田先生がお会いになるそうだ。入れ。」
屋敷まで雪がなければ芝生であろうと思われる石の参道のようなところを男の後を追う。
ガラガラガラ 玄関が開く いきなり虎の大きな絵が描かれた衝立が目に入る。
入ってすぐ右横が応接間である。中に通され静かに座る。あまり暖房が効いてないのでチョイ寒い。
「やあ!平岡君よく来た。ここは寒いから奥行こう。」
奥の和室に通される。失礼とは思うが年配の田舎のおじさんが第1印象。
この人物の恐ろしさを知らないバカ者であることは後々わかる。
こたつ部屋の和室。温かさにホットする。
「なんで来たんだ」
「はい、空拳法がどの様な流派か、見学に来ました。」
「いやいやなんで来たのかと聞いているんだよ。」
「ですので、どのような流派か見学に来ました。」
「わの発音がよすぎるべか?どのような方法で来たかということだよ。」
「失礼しました。上野から電車で八戸駅まで来ました。」
「それは遠かったびょん。」津軽弁の響きが心地よかった。
お弟子さんがしきりにお茶を入れている。
「わはお茶が好きでねえ、御茶と煙草さえあればよい。」